カスタマイズ化に最適なIJCADで、
最適パフォーマンスを実現。
導入から11年を数えるIJCADは設計部門の最重要ツールとなり、不可欠な2次元CADとなっている。
三洋機工株式会社は愛知県北名古屋市に本社を置く、自動車や航空機、家電製品などの自動組立システム、あるいは、精密自動測定、自動溶接等の生産管理システムなどのライン・ビルダーである。
本社・本社工場にある設計部門で、2008年より、インテリジャパンのDWG互換CADソフト「IJCAD」を本格導入している。2017年現在、スタンドアロン版100、ネットワークライセンス版70、合計170のIJCADライセンスを導入。
米国から届いたDWG互換CAD IntelliCADの情報
三洋機工とIJCADの出会いは古く、2006年に遡る。
情報技術部の小坂井健二部長は、IJCADの原点であるIntelliCADの情報を同社米国法人SANYO MACHINE AMERICA CORPORATION(ミシガン州)から入手した。
「米国の社長が、AutoCADライクの『IntelliCAD』というのがあるよ、と情報を伝えてくれました。われわれはちょうどAutoCADに替わるDWG互換CADの検討に入っていたところで、いろいろなフォーラムなどで情報を得ていました。社長の勧めもあり『IntelliCAD』を調べてみると、販売元が名古屋。灯台下暗しでした(笑)」。(小坂井部長)
小坂井部長にとって、IntelliCADはOpenDWGのフォーラムなどで名前はすでに知ってはいたが、実用面ではまったく未知数だった。そのような状況下の2006年にIJCAD 6.4を数本購入し、同時に情報技術部内での精査がスタートする。ところが、坂戸雅規技師長補は当時のIJCADには良いイメージが少ないという。
「最初は残念ながらビジネスユースに耐えられるものではありませんでした。AutoCADレギュラーが当社の主力2D CADでしたが、IJCAD 6.4の操作性はAutoCADとはかけ離れたものでした」(坂戸技師長補)
コストパフォーマンス向上と製品スキル
情報技術部はさまざまな社内の生産管理システムを精査して、最適のシステムやデータベースを構築する部署である。DWG互換CADにかかわらず、さまざまなシステムやソフトを社内作業に最適化する業務を担っており、担当社員はみなプログラミング知識が豊富だ。
「差し迫った問題として、AutoCADもOSに対応させていくには何度もバージョンアップを繰り返さなければならない。しかし、1本数十万円もする製品を短い期間で何百本もその都度購入するというのは現実的ではない。実際、AutoCAD2000や2002レベルのパフォーマンスがあれば当社の業務にはまったく問題なく対応できるのに、
WindowsXP、Windows7とOSが上がるたびにAutoCADも入れ替えなければならない。そのコストがビジネスコストに適うかどうかは常に考えていかなければなりません」(小坂井部長)
DWG互換CADを導入することでイニシャルやランニングコストが飛躍的に下がる。それは非常に重要な部分であるが、それにより機能や操作性が下がるのであれば、経営的にはマイナスでしかない。
「使いものにならない」DWG互換CADを「使えるものにする」ためには、およそ2年の月日が必要だった。
高品質設計に必要不可欠なIJCADカスタマイズ
「われわれにとって欠かすことのできない拡張機能のいくつかがIJCADではできなかった。それをすぐに営業の人にリクエストする。その優先順序をどうするか。完成はいつになるか。そういった要求をたくさんしました。でも、それら一つひとつに丁寧に対応してくれた。そういう部分は導入の大きな動機になりました」(小坂井部長)
この当時、情報技術部では並行して他のDWG互換CADも調べていたという。
「2社程度、DWG互換CADを検討していました。ただ、それらはカスタマイズの点で大きな障害がありました。IJCAD以外はカスタマイズの許可が下りなかったのです。また、海外ソフトなので言語は英語。スムーズな日本語が表示されるのはIJCADのみでした」(小坂井部長)
およそ2年のテストを経て、三洋機工はIJCADの本格導入に至る。
2008年、スタンドアロン版150ライセンスを導入
「IJCADの導入は2008年です。150ライセンスを購入しました。そこから、徹底的にIJCADを三洋機工オリジナルに加工していく作業が始まりました。
まずは、メニュー画面から。クラシックメニューはAutoCADとよく似ていましたが、AutoCADもわれわれ専用にカスタマイズをしていましたから、同様にIJCADもメニュー画面の作り替えが必要となります。どんなソフトでもそうですが、使う頻度とボタンの位置の関係はとても大事です。リボンを外して、使用頻度の高いタブやコマンドを操作しやすい位置に置いたり、下層にある機能を上層に配置したり、原形をとどめないスタイルになります」(坂戸技師長補)
機能面において問題となったのは「外部参照」と「自動処理」機能だった。「外部参照」は機械設計、「自動処理」は電気設計にいずれも欠かすことのできない機能である。その処理スピードがAutoCADのレベルでなかった。それがもとでリリースできない状態が長期に渡ってしまったのだ。
「機械設計ではAutoCADにもどった時期もありました。まだ、Windows7が標準OSになる前でXPがたくさん動いていましたので、仕事に支障がでることはなかったのですが」(小坂井部長)
「あのときはどうしようと悩みました。AutoCADでできたことがIJCADに移ったことでできなくなったなどと、結構厳しい意見が返ってきました。われわれと、システムメトリックスの開発者総出で対応に追われたことは忘れられません」(坂戸技師長補)
ストレスフリーのDWG互換CADを目指して
三洋機工の設計部門で走るIJCADには大量のアドオンが組み込まれており、また、電気設計の自動処理などはコマンドの数がとても多くなる。簡単な修正で対応できることはまずない。当社の開発者も全力でその向上に努めた。設計部門でストレスフリーでIJCADをコントロールできるようになるのはいつ頃だったのだろう。
「最適環境になっているのかはまだわかりません。これからもさまざまな改善点は出てくると思います。しかし、5、6年前からAutoCADユーザーは一握りとなり、大半はIJCADで作図しています。今はAutoCADは適正表示を確認するのみにしか使われていません。それがIJCADの当社でのスキルを示しているのではないでしょうか」(坂戸技師長補)
取材には入社2年目の情報技術部、堂田貴裕氏にも出席いただいた。堂田氏は三洋機工に入社してはじめてIJCADを操作した。
「これまで大学でもたまにCADを使ったことはあったのですが、3Dが主でIJCADの存在も知りませんでした。つい先日、電気図面のパーツ設計の自動処理プログラムを作りました。Visual Basic .NETを使ったのですがちゃんと設計図面に反映され、IJCADの能力を実感しています。手動とは手間や入力ミスが段違いで少なく、これからももっと複雑なプログラミングをマスターしていきたいと考えています」(堂田氏)
カスタマイズIJCADで作図した図面は会社の資産
IJCADがはじめて使うCADソフトという若い社員も増えた。小坂井部長、坂戸技師長補のお二人に2D設計やIJCADの三洋機工における将来像についてお聞きした。
「設計者のなかにはIJCADしか使ったことがないという人も増えてきました。それはいいことだと思います。AutoCADを知らなくても問題はない。なぜならIJCADを使っていればAutoCADも使えるということですから。
そして、われわれがカスタマイズする重要な動機である操作性の統一。レイヤーや寸法スタイル、文字スタイル――、それぞれ各社各人、各様の定義がありますが、それを統一して使用することで、だれが描いても同じ品質の図面ができる。
設計者個々のこだわり、勝手な思いが汎用性を疎外するのであればそれは同品質とはいえません。作られた図面は会社の資産です。徹底的にカスタマイズ化されたことで実現した操作性の統一によって、それを成し遂げられていると思います」(坂戸技師長補)
「まず当社では2次元CADはまだまだ必要だということです。われわれは設備メーカーです。お客さまの要求には可能なかぎりお応えします。自動車や航空機、あるいは家電などは3D設計が標準化されてきました。しかし、それを製造する設備は2D設計が主流です。生産現場あるいは外注業者さんなどでは2Dでないと作ることができない。溶接ラインやロボット設計は3Dですが、実際の製作図面は3Dデータを2Dに書き換えたものです。小さなネジやブラケットの設計を3Dでやる意味はありません。IJCADが果たす役割は将来ますます増えていくでしょう」(小坂井部長)
※ 三洋機工株式会社のホームページ
http://www.sanyo-machine.co.jp/
※ 取材制作:オフィスNWK
※ 取材日時:2017年9月